相関係数とは?
相関係数(読み方:そうかんけいすう|英語:correlation coefficient)とは、2つの変数(変化する数字)がどの程度関連しているかの”相関関係”を表した指標です。相関係数を見れば変数同士の関係を視覚的に把握しやすくなることから、金融市場では2つの資産(株式や債券など)の値動きの相関関係を統計的に分析する際によく使われています。
相関関係とは、2つの変数の間にどの程度の関係があるか、つまり”一方の変数が変化する際にもう一方の変数がどのように変化するか”を示すもので、相関関係は通常、相関係数で表されます。
相関関係と連動性は違う
相関係数を説明する際「2つの変数の連動性を表す指標」という間違った解説がよくありますが、相関係数は相関関係を表した指標で、連動性を表した指標ではありません。連動性は、2つの変数が同じ方向に動く傾向があるかどうか、つまり、動きが一致しているかどうかを示す概念で、具体的な数値としては定義されません。例えば「株価と為替の連動性」といったように、市場動向を把握する際に使われますが、相関関係は相関係数として統計的な手法で数値的に測定されます。つまり、相関関係は、統計的に2つの資産の関係性を測るもので、連動性は2つの資産が同じ方向に動くかどうかを観察する現象です。よって、連動性があっても相関がない場合や、相関が高くても必ずしも連動性が高いとは限らないので注意が必要です。
先述の通り、相関関係は”一方の変数が変化する際にもう一方の変数がどのように変化するか”の関係で、一方の変数が上昇すればもう一方も上昇する、あるいは一方が上昇すれば一方は低下する、といった2つの変数の関係です。
相関係数の数値はどう見ればいい?
相関係数は、金融市場では2つの資産の値動きの相関関係を分析する際に見られる指標ですので、ここからは上記で説明した「変数」を「資産」と表記します。
相関係数は「-1から1」の範囲で表される指標です。値が「-1から1」までの範囲で表されるため、資産間の関係性をすぐに評価できる指標です。
- 相関係数が1
2つの資産が完全に正の相関を持っており、一方が上昇すればもう一方も上昇する(一方が低下すればもう一方も低下する)。 - 相関係数が0
2つの資産に全く相関がない。一方の値動きはもう一方の値動きに影響を与えない。 - 相関係数が-1
2つの資産が完全に負の相関を持っており、一方が上昇すればもう一方は低下する(一方が低下すればもう一方は上昇する)。
相関係数が1に近づけば「正の相関がある」といい、-1に近づけば「負の相関がある」といいます。”近づけば”がどの程度であるのか具体的な基準はありませんが、一般的に以下のように見られることが多いです。
0.7以上 | 強い正の相関がある |
0.5から0.7 | 正の相関がある |
0から0.5 | 相関がない |
0 | 全く相関がない |
0から-0.5 | 相関がない |
-0.5から-0.7 | 負の相関がある |
-0.7から-1 | 強い負の相関がある |
例えば、日本株式(TOPIX)と日本債券は相関係数が長期的に0から-0.5程度で推移しやすい傾向があります。この場合、負の相関、つまり逆相関寄りですが相関性はほとんどないと評価されます。
相関係数のチャートについて
当サイト「株式マーケットデータ」では、掲載している指標によって相関係数の推移を掲載しています。
こちらのチャートは、以下のリンク先のページで掲載している日米10年国債金利差とドル円の相関係数の推移を表したチャートです。
ここでは、掲載している相関係数のチャートについて説明します。
当ページを記載している時点では、日米10年国債金利差とドル円の相関係数は「1カ月」「3カ月(四半期)」「1年」の相関係数のチャートを掲載しています(上に表記しているチャートは日米10年国債金利差とドル円の1年の相関係数のチャートです)。
「1カ月」「3カ月(四半期)」「1年」とは何か?
これは相関係数を算出している”期間”です。いつからいつまでの値動きから算出した相関係数なのか?ということです。
「1カ月」であれば、直近1カ月間の日米10年国債金利差とドル円の相関係数です。直近1カ月間(1カ月前から当日まで)の日米10年国債金利差とドル円の値動きから算出した相関係数ということです。
日米金利差とドル円の相関係数は、概ねよく見られやすい「1カ月」「3カ月(四半期)」「1年」を掲載してます。
相関係数の期間はチャート上部のタブで「1カ月」「3カ月(四半期)」「1年」を切り替えられますのでご利用下さい。
相関関係は時期や市場環境によって刻々と変化します。そのため常に最新の相関係数のデータを基に分析するようにしましょう。
相関係数の算出方法と良い点・悪い点
当サイトの相関係数は”ピアソンの積率相関係数(Pearson correlation coefficient)”を用いています。これは最も一般的に使われる相関係数で、通常単に「相関係数」と言われることも多いです。2つの変数間の線形関係を測るのに非常に有用で、データの傾向を把握するために広く使われています。「-1から1」で表されるため、変数間の関係性をすぐに評価できるのは良い点です。ただ、変数同士の関係性を表すものであり、「原因と結果」の関係を直接示すわけではなく、高い相関があっても片方がもう片方の原因とは限りませんし、データに外れ値があると値が大きく変わってしまう可能性があります。また、相関係数は線形関係(2つの変数の間に一定の比例関係がある場合)を測定するものであるため、非線形な関係がある場合(2つの変数の間に一定の比例関係がなく、変化が一定ではない場合)には適切に測定できないのは悪い点です。
金融市場での相関係数の使い方
金融市場では、株と為替、金利などの相関を分析する際に相関係数は最もよく用いられる指標です。
例えば、株価と為替レートの相関を調べることで、企業や投資家はどの通貨で資産を保有するべきか、または為替リスクをどのように管理すべきかを判断します。特に輸出企業や多国籍企業は、為替レートと株価の関係性は非常に重要です。円安になれば、日本の輸出企業の利益が増えて輸出企業の株価上昇要因となりやすいです。このとき円安と株価の間には正の相関が見られることがあります。
また、金利と株価の相関関係も重要で、金利が上昇すれば企業の借入コストが増えますし、消費が冷え込みやすくなるため、株価下落要因になりやすいです。この時、金利と株価は負の相関が見られることが多いです。
分散投資とヘッジ戦略
相関係数は、単に異なる資産クラスや市場の動きがどのように関連しているかを見るだけでなく、分散投資のリスク管理でも使われる指標です。
相関係数は、異なる資産(株、債券、金など)の相関係数を分析して、ポートフォリオのリスクを管理するのに適しています。相関が低い、または負の相関を持つ資産を組み合わせれば全体のリスクを低減することができますので、分散投資のリスク管理でよく使われている指標です。
例えば、株式と債券の相関係数は低い傾向があります。株式市場が下落しても債券市場が比較的安定していれば、株式と債券を組み合わせたポートフォリオは、リスクを分散させられます。このように、分散投資では負の相関にある資産を組み合わせて、価格変動リスクを低減するのが一般的です。自分にとって魅力のない資産があっても、自分が保有している資産と負の相関にあれば、それをポートフォリオに加えてリスクヘッジすることができます。一方、正の相関の資産をいくら組み合わせて分散投資しても、価格変動リスクは全く低減されませんので注意が必要です。