米国の預貸利ざやの概要
米国(アメリカ)銀行の預貸利ざやの最新データを速報で掲載しています。資産規模別と全体(全米)の銀行の預貸利ざやのチャートを掲載しています。預貸利ざやは貸出金利と預金金利の差による利益で、銀行の収益性を表す指標です。預貸利ざやの拡大・縮小だけでなく、そのペースも見ておきましょう。
- 当ページは、米国銀行の預貸利ざやの解説と推移(チャートと時系列)を掲載したページです。
- Source:Federal Deposit Insurance Corporation
- FDIC(米連邦預金保険公社)公表のデータから株式マーケットデータが作成。
- 四半期データ
- 単位:%
- U.S. Net Interest Margin-historical data&chart
預貸利ざやとは?意味をわかりやすく解説
預貸利ざや(読み方:よたいりざや|漢字:預貸利鞘)とは、貸出金利と預金金利の差による利益のことです。預貸利ざやは、銀行など金融機関の収益性を表す指標です。「預貸金利ざや(預貸金利鞘)」ともいいます。貸出金利は貸出によって得られる金利、預金金利は預金に対して支払う金利です。
銀行が適切に預貸利ざやを管理することで収益性を最大化し、リスクを管理することが可能となります。ただし、適切なバランスを保つことが重要で、預金の過剰な利用や貸し出しの過度な拡大はリスクを高める可能性があります。したがって、銀行はリスク管理と収益性の両面を考慮しながら預貸利ざやを最適化する必要があります。金融業界において、銀行の健全性や経営の効率性を評価する際に、預貸利ざやは重要な指標として用いられます。また、金融政策や経済状況の変化に影響を受けるため、定期的に監視される必要があります。
預貸利ざやの計算式
- 預貸利ざや=貸出金利-預金金利
預貸利ざやで銀行の収益性を見る
銀行など金融機関は、預金などで集めた資金を貸し出して収益を得ていますので、預貸利ざやが拡大すれば収益力が上がる要因となり、預貸利ざやが縮小すれば収益力が下がる要因となります。預貸利ざやは、市場の競争度・コスト・リスク回避度・金利リスク・信用リスク(クレジットリスク)・預貸業務以外の業務・貸出と預金の満期差によるリターンが決定要因との研究が多いです。
預貸利ざやの銀行の収益とリスク管理に与える影響
預貸利ざやは、銀行の収益とリスク管理に多大な影響を与えます。預貸利ざやが高い場合、銀行は顧客からの預金を効果的に活用して貸し出しを行っていることを示します。貸出活動が順調であり、銀行の収益性が高いと見なされます。預貸利ざやが高い場合、銀行の利息収入を増加させることができます。これは、預金からの利息費用よりも貸付からの利息収入が高いためです。また、預貸利ざやが高い場合、銀行の貸出ポートフォリオが健全であることを示す場合があります。ただし、高い利ざやを維持するために、銀行は貸し出しに対する信用リスクや市場リスクなどのリスクを適切に管理する必要があります。預貸利ざやが低い場合、銀行は顧客からの預金を十分に活用できていないことを示し、貸出が低調である可能性があります。収益性が低下する一方で、流動性リスクが高まる可能性があります。
預貸利ざやの拡大・縮小の影響
銀行は、金利の変動に応じて預金金利や貸出金利を引き上げたり引き下げたりします。FRB(連邦準備制度理事会)の利上げ・利下げを受けて預金金利や貸出金利は見直されますが、金利上昇は多くの米国銀行にとって預貸利ざやの拡大・収益拡大につながりやすいです。FRBの利上げ局面で貸出金利が預金金利より上昇すれば(貸出金利の引き上げ幅が預金金利の引き上げ幅より大きければ)、銀行はその利ざやで稼げますし、純金利収入が増えます。また、経済が順調な状況であれば貸出が増えて貸し倒れのリスクも低くなり信用環境は良くなります。
一方、金利低下は米国銀行にとって利ざやの縮小・収益縮小につながりやすいです。FRBの利下げ局面で貸出金利が預金金利より低下すれば(貸出金利の引き下げ幅が預金金利の引き下げ幅より大きければ)、預貸利ざや縮小で収益や利益を圧迫され、利下げ局面は経済が良くない状況で実施されやすいので貸出が減って貸し倒れのリスクも高くなり信用環境は悪くなります。
ただし、FRBの利上げ・利下げによって必ず預金金利や貸出金利が引き上げられたり引き下げられたりするものではありません。その解説は、以下の米国の貸出金利の基準金利であるプライムレートのページに記載していますので参照して下さい。
預貸利ざやと金利の上昇・低下の感応度
金利上昇・低下で預貸利ざやが拡大・縮小し、多くの銀行にとって収益・利益の拡大・縮小につながりやすいと書きましたが、その感応度は銀行によって異なります。各銀行は資産と負債の構成が異なりますので、貸出など収益を得る資産と預金など資金調達の負債の構成から金利に対する感応度をチェックする必要があります。通常、収益に占める利ざや収入は大手銀行より地方銀行の方が高いので、地方銀行の方が感応度が高い傾向があります。大手銀行は貸出だけでなく、その他業務も多く抱えていますので、地方銀行より感応度は鈍くなりやすいです。また、貸倒引当金や預金コストが増えている銀行も感応度は鈍くなりやすいです。
預貸利ざやの拡大・縮小のペースも見る
多くの銀行にとって預貸利ざやの拡大・縮小は収益・利益の拡大・縮小につながりやすいですが、拡大・縮小のそのペースも注目ポイントになります。例えば、預金金利より貸出金利の上昇ペースが早ければ預貸利ざや拡大のペースが早くなりますので、感応度が高い銀行株の銘柄が恩恵を受けやすく投資妙味があると考えられます。ただ、例えば貸出が伸びていないような状況であれば預金金利の上昇の方が上回って預貸利ざやの上昇ペースが鈍化することもありますので注意して見ておく必要があります(これらはFRBの利下げ局面ではこの逆のことが言えます)。
また、利上げ局面で金利が上昇する過程では、銀行はその恩恵を受けるために貸出金利を引き上げて預金金利を抑える行動に出やすくなります。そうなると顧客は高いリターンを求めて預金を引き出す行動に出やすくなります。中小の銀行ほど預金が引き出されやすくなり、大手銀行に預金が集まりやすくなります。というのも、その状況下では預金者を集めるために銀行は高い金利を提供しようとしますが、競争力は大手銀行の方が高く、より多くの金利を提供するのに中小の銀行ほど痛くはないからです。こういった預金者つなぎ留め等の預金金利引き上げなども預貸利ざやの拡大・縮小に影響しますので、注意して見ておきましょう。
預金残高や貸出残高が増えているのか減っているのかは、以下の預貸ギャップのページにチャートで掲載していますので、併せてチェックしておきましょう。
預貸率の推移はこちら
銀行が顧客から受け取った預金のうち、どれだけを貸し出しに活用しているかを示した指標「預貸率」は、以下のページに掲載しています。
当ページの預貸利ざやのチャートと時系列について
当ページでは、米国の金融機関の健全性を監督するFDIC(連邦預金保険会社)が公表している資産規模別の銀行および銀行全体の預貸利ざやの推移を掲載しています。FDIC(米連邦預金保険公社)は、米国の金融機関が破綻した際、一定額の預金などを保護するための預金保険制度を運営しています。米国銀行の預貸利ざやを見る際、最もよく見られているデータです。
資産規模別の預貸利ざや
FDIC(米連邦預金保険公社)は、以下の資産規模別の銀行の預貸利ざやを公表しています。括弧は2023Q3時点の銀行数です。
- 1億ドル未満規模の銀行(726行)
- 1億ドルから10億ドル規模の銀行(2,890行)
- 10億ドルから100億ドル規模の銀行(842行)
- 100億ドルから2500億ドル規模の銀行(142行)
- 2500億ドル超規模の銀行(14行)
全体の預貸利ざや
FDIC(米連邦預金保険公社)は、商業銀行と貯蓄金融機関(S&L)の計4614行(2023Q3時点)の財務状況を集計しており、「全体」は全体(全米)の預貸利ざやです。
チャート(預貸利ざや・米国)
米国銀行の預貸利ざやのチャート
- Chart [Margin(Loans&Leases-Deposits)-Quartely]
1億ドル未満規模の銀行の預貸利ざやのチャート
- Chart [Assets <$100 Million-Quartely]
1億ドルから10億ドル規模の銀行の預貸利ざやのチャート
- Chart [Assets $100 Million-$1 Billion-Quartely]
10億ドルから100億ドル規模の銀行の預貸利ざやのチャート
- Chart [Assets $1 Billion-$10 Billion-Quartely]
100億ドルから2500億ドル規模の銀行の預貸利ざやのチャート
- Chart [Assets $10 Billion-$250 Billion-Quartely]
2500億ドル超規模の銀行の預貸利ざやのチャート
- Chart [Assets >$250 Billion-Quartely]
全体(全米)の銀行の預貸利ざやのチャート
- Chart [All Insured Institutions-Quartely]
[速報] 最新データ|預貸利ざやの時系列(historical data)
期間 | 2500億 ドル超 | 100億ドル- 2500億ドル | 10億ドル- 100億ドル | 1億ドル- 10億ドル | 1億ドル 未満 | 全体 |
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