米国(アメリカ)のシャドーレートの概要

シャドーレートは、政策金利に量的緩和の効果を換算した金利です。中央銀行の真の金融緩和・金融引き締めの度合いが測れる指標で、当ページで掲載している米国(アメリカ)のシャドーレート(影のFF金利)は、FRBも注目しています。以下の見方の解説を読んでから推移を見ていただければわかりやすいと思います。
当ページでは、アトランタ連銀版のシャドーレートに加え、新たに算出・公表されたサンフランシスコ連銀版のシャドーレート(プロキシファンドレート・代替的FF金利・代理資金レート)も掲載しています。
- 当ページは、米国のシャドーレートの解説と推移(チャートと時系列)を掲載したページです。
- Source:Federal Reserve Bank of Atlanta,Federal Reserve Bank of San Francisco
- アトランタ連銀が公表している最も有名な「Wu-Xia Shadow Federal Funs Rate」を掲載しています(解説は以下に記載します)。
- アトランタ連銀は現在、シャドーレートの更新を一時停止しています。詳しくはチャート下の「アトランタ連銀版のシャドーレートの更新について」の欄を参照してください。
- 2022年12月よりサンフランシスコ連銀が新たにシャドーレート(プロキシファンドレート)の算出・公表を始めました。当ページでは、そのサンフランシスコ連銀版のシャドーレート(プロキシファンドレート・代替的FF金利・代理資金レート)も掲載しています。
- 速報値を掲載し、改定値で修正があった場合は改定値を上書きして掲載しています。
- Shadow Rate(shadow federal funds rate) historical data&chart
- Proxy Funds Rate(Federal Reserve Bank of San Francisco)historical data&chart
シャドーレートとは?
シャドーレート(英語:Shadow Rate)とは、「影の金利」や「潜在金利」と呼ばれる、金融緩和や金融引き締めの真の度合いを測る指標の一つです。2008年のリーマンショック以降、真の金融緩和の度合いを測るために注目された指標で、エコノミストのジン・ シンシア ・ウー氏(Jing Cynthia Wu)と、ファン・ドラ・キア氏(Fan Dora Xia)が提唱したモデルが有名です。
シャドーレートをわかりやすく簡単に解説
シャドーレートを簡単に言うと、政策金利に量的緩和(QE)の効果が換算された金利です。
シャドーレートで真の金融緩和・金融引き締めの度合いが測れる!
2008年のリーマンショック以降、先進国の中央銀行の金融緩和は利下げ(政策金利の引き下げ)から非伝統的な金融緩和策である資産購入(量的緩和)も積極化されましたが、金融緩和の真の度合いを測るには政策金利だけ見るのではなく、量的緩和の効果も考慮する必要が出てきました。そこで登場したのが「シャドーレート」です。
利上げ・利下げの解説は、姉妹サイト「株式投資大百科」の以下のページを参照してください。
米国の政策金利であるFF金利は、FRB(連邦準備制度理事会)がマイナス金利を導入していないためゼロ以下にはなりません。量的緩和時にゼロ以下に下がれないFF金利を見ていても、FRBの真の緩和効果はわかりません。そこで考案されたのが、イールドカーブ(利回り曲線)を基に資金供給量を仮想のマイナス金利幅に換算する「シャドーレート」です。シャドーレートは、米国の政策金利であるFF金利に量的緩和の効果が織り込まれた金利ですので、例えばFF金利がゼロ近辺で推移していたとしても、シャドーレートがそれ以下のマイナスで推移していたとすれば、政策金利をマイナスにしたのと同じ金融状況になっていることを示します。
米国のFF金利の解説と推移(チャートと時系列)は、以下のページで掲載しています。

FRBのバランスシート(総資産)は、以下のページで掲載しています。

米国のシャドーレートは「影のFF金利」とも呼ばれていますが、FRBもこれを注目しており、アトランタ連銀によって米国のシャドーレート(影のFF金利)が公表されています。アトランタ連銀が公表しているシャドーレートは、上記で紹介したジン・ シンシア ・ウー氏とファン・ドラ・キア氏のモデル「Wu-Xia Shadow Federal Funs Rate」というもので、米国のシャドーレートを見るにはこれが最も有名ですので、当ページではそのシャドーレートを掲載しています。
上記では、例として金融緩和の真の度合いを測る指標としてのシャドーレートの説明をしましたが、量的緩和が解除された場合、シャドーレートはそれも織り込まれますので、金融引き締めの真の度合いを測る指標ともなります。FRBは資産購入を終了してから間をあけて利上げ(政策金利の引き上げ)をする傾向がありますが、FRBが利上げをしていなくてもFRBが資産保有量を減らせば、その減額した額に見合った資金が市場から吸収されるのでシャドーレートは上昇します。これは、影で(暗黙のうちに)利上げの状態にあることを示し、金融引き締めの状況にあることを示します。
FRBが保有している米国債の推移(チャートと時系列)は、以下のページで掲載しています。

シャドーレートと量的緩和・テーパリングと利上げの過去の傾向
ちなみに、シャドーレートは量的緩和が実施されている間は基本的には低下します。そして、2014年の時を例にしますが、テーパリング(量的緩和縮小)が実施されている期間中は概ね底辺に張り付いて横ばいになり、テーパリング終了時から上昇し始め、その後に利上げが実施されてからは利上げに添う形で上昇しています。これが参考になる過去の傾向です。
サンフランシスコ連銀のシャドーレート(プロキシファンドレート)について
アトランタ連銀は2022年4月8日にシャドーレート(影のFF金利)の更新を一時停止しましたが、2022年12月にサンフランシスコ連銀が新たにシャドーレート(プロキシファンドレート)の算出・公表を開始しましたので、当ページではそのサンフランシスコ連銀版のシャドーレート(プロキシファンドレート)も掲載しています。当欄では、以下にサンフランシスコ連銀版のシャドーレート(プロキシファンドレート)の解説を記載します。
プロキシファンドレート(代替的FF金利・代理資金レート)とは?(サンフランシスコ連銀公表分)
サンフランシスコ連銀版のシャドーレートは「プロキシファンドレート」と呼ばれる、量的緩和政策・量的引き締め政策やフォワードガイダンスの効果を踏まえ、実際に取引されている公的・民間の借入金利やスプレッドを使用して推測されるFF金利です。サンフランシスコ連銀版のシャドーレート「プロキシファンドレート」は「代替的FF金利」や「代理資金レート」とも呼ばれています。当ページでは、意味合いは同じですので、そのプロキシファンドレート(代理資金レート)を「シャドーレート」として掲載しています。
FOMC(連邦公開市場委員会)が金融政策においてフォワードガイダンスやFRBのバランスシートの変更などの追加ツールを使用する場合、これらの政策措置は財務状況に影響を与えるため、それらを考慮したFF金利がサンフランシスコ連銀版のシャドーレート(プロキシファンドレート)です。つまり、量的緩和政策・量的引き締め政策やフォワードガイダンスの効果を踏まえた真のFF金利の水準はどれくらい?を表したのがサンフランシスコ連銀版のシャドーレート(プロキシファンドレート)です。
算出方法
サンフランシスコ連銀版のシャドーレート(プロキシファンドレート)は、財務政策のより広範なスタンスを評価するために、米国債金利、住宅ローン金利、借入スプレッドを含む12の金融変数のセットが使用されています。主成分を使用して、12の財務変数間の共通の動きが抽出されます。次に、最初の3つの主成分がFF金利のレベルにマッピングされます。このマッピングは、2008年以前のそれらの間の相関関係を反映しています。2008年12月までは、マッピングは構造上ほぼ正確です。2008年以降、金融状況から資金率へのマッピングは発散します。この分離は、フォワード ガイダンスやバランスシート操作などの金融状況の変化にプロキシファンド レートがどのように反応するかを示しています。プロキシレートは、一般的な金融市場の状況がファンドレートのみによって引き起こされた場合に、どのようなフェデラルファンド レートが一般的に関連するかを示すものとして解釈できます。
チャート(アトランタ連銀版のシャドーレート)
アトランタ連銀版のシャドーレート(影のFF金利)のチャート

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- チャートは「拡大表示はこちら」で拡大できます。拡大表示されたチャートにカーソルを合わせれば、カーソルの位置のデータが表示されます。
- 毎月最終営業日時点のデータが反映されています。
- Chart [Shadow Rate(shadow federal funds rate)]
アトランタ連銀版のシャドーレートとS&P500の比較チャート

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- Chart [Shadow Rate and S&P500]
アトランタ連銀版のシャドーレートの更新について
2022年4月8日アトランタ連銀公表分
チャート(サンフランシスコ連銀版のシャドーレート)
サンフランシスコ連銀版のシャドーレート(プロキシファンドレート)とFF金利のチャート

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- 毎月最終営業日時点のデータが反映されています。
- チャートの「FF金利」は実効FF金利の推移です。実効FF金利の推移と解説は、以下のページで掲載していますので参考にしてください。

時系列(historical data)
- こちらの時系列データは、サンフランシスコ連銀版のシャドーレート(プロキシファンドレート・)の時系列データです。
- 単位:%
日付 | シャドーレート(影の金利・プロキシファンドレート) |
---|---|
2022年12月 | 6.156633468 |
2022年11月 | 6.442673797 |
2022年10月 | 6.163997223 |
2022年09月 | 5.372549885 |
2022年08月 | 4.638318214 |
2022年07月 | 4.425884892 |
2022年06月 | 4.06891864 |
2022年05月 | 3.550931988 |
2022年04月 | 3.474846629 |
2022年03月 | 2.773398047 |
2022年02月 | 1.939115277 |
2022年01月 | 1.18207588 |
2021年12月 | 0.855790022 |
2021年11月 | 0.39009317 |
2021年10月 | 0.115761809 |
2021年09月 | 0.050455156 |
2021年08月 | 0.107045513 |
2021年07月 | 0.068677195 |
2021年06月 | -0.204023004 |
2021年05月 | -0.464676636 |
2021年04月 | -0.415306768 |
2021年03月 | -0.390033094 |
2021年02月 | -0.103815456 |
2021年01月 | 0.150594831 |
2020年12月 | 0.380127107 |
2020年11月 | 0.59713535 |
2020年10月 | 0.724917617 |
2020年09月 | 0.90444681 |
2020年08月 | 1.014721512 |
2020年07月 | 1.164543145 |
2020年06月 | 1.168642077 |
2020年05月 | 1.301639129 |
2020年04月 | 1.516239 |
2020年03月 | 1.611997247 |
2020年02月 | 2.15369401 |
2020年01月 | 2.189457737 |
2019年12月 | 2.258789916 |
2019年11月 | 2.311492387 |
2019年10月 | 2.366710643 |
2019年09月 | 2.477109186 |
2019年08月 | 2.396422728 |
2019年07月 | 2.311653244 |
2019年06月 | 2.268853082 |
2019年05月 | 2.646911246 |
2019年04月 | 2.705733778 |
2019年03月 | 2.854537047 |
2019年02月 | 2.90587696 |
2019年01月 | 3.006581676 |
2018年12月 | 3.202499197 |
2018年11月 | 3.2076182 |
2018年10月 | 3.12202898 |
2018年09月 | 3.076493978 |
2018年08月 | 2.969840123 |
2018年07月 | 2.928168844 |
2018年06月 | 2.782081738 |
2018年05月 | 2.648935046 |
2018年04月 | 2.493766705 |
2018年03月 | 2.330062548 |
2018年02月 | 2.042056704 |
2018年01月 | 2.02551382 |
2017年12月 | 1.914921849 |
2017年11月 | 1.691883634 |
2017年10月 | 1.392553308 |
2017年09月 | 1.263449808 |
2017年08月 | 1.233144693 |
2017年07月 | 1.185906553 |
2017年06月 | 1.276271009 |
2017年05月 | 1.098309296 |
2017年04月 | 1.018966807 |
2017年03月 | 0.963939256 |
2017年02月 | 0.841279466 |
2017年01月 | 0.856384824 |
2016年12月 | 0.786524547 |
2016年11月 | 0.658234725 |
2016年10月 | 0.799627419 |
2016年09月 | 0.923733476 |
2016年08月 | 0.978340819 |
2016年07月 | 0.952911064 |
2016年06月 | 0.934012991 |
2016年05月 | 0.817324509 |
2016年04月 | 0.759991665 |
2016年03月 | 0.920225867 |
2016年02月 | 0.815343303 |
2016年01月 | 0.80954165 |
2015年12月 | 0.780830073 |
2015年11月 | 0.530652944 |
2015年10月 | 0.273910754 |
2015年09月 | 0.273405756 |
2015年08月 | 0.266834845 |
2015年07月 | 0.066182195 |
2015年06月 | -0.029295148 |
2015年05月 | -0.034154103 |
2015年04月 | 0.144832612 |
2015年03月 | 0.236703151 |
2015年02月 | 0.24892145 |
2015年01月 | 0.285491609 |
2014年12月 | 0.048761595 |
2014年11月 | -0.288744393 |
2014年10月 | -0.380479028 |
2014年09月 | -0.459199995 |
2014年08月 | -0.537563988 |
2014年07月 | -0.666182417 |
2014年06月 | -0.850991005 |
2014年05月 | -0.866334496 |
2014年04月 | -0.923971179 |
2014年03月 | -0.996730625 |
2014年02月 | -1.153038657 |
2014年01月 | -1.186017275 |
2013年12月 | -1.337058722 |
2013年11月 | -1.280157438 |
2013年10月 | -1.090464204 |
2013年09月 | -1.062800416 |
2013年08月 | -1.049308542 |
2013年07月 | -0.857421024 |
2013年06月 | -0.646231785 |
2013年05月 | -0.572045616 |
2013年04月 | -0.452191189 |
2013年03月 | -0.607638215 |
2013年02月 | -0.602403445 |
2013年01月 | -0.569875167 |
2012年12月 | -0.321027371 |
2012年11月 | -0.1899333 |
2012年10月 | -0.314931649 |
2012年09月 | -0.189704742 |
2012年08月 | -0.014986295 |
2012年07月 | 0.13783089 |
2012年06月 | 0.132019275 |
2012年05月 | -0.05656771 |
2012年04月 | -0.383157168 |
2012年03月 | -0.43100789 |
2012年02月 | -0.242948667 |
2012年01月 | -0.274011043 |
2011年12月 | -0.269179927 |
2011年11月 | -0.335924539 |
2011年10月 | -0.406809174 |
2011年09月 | -0.2792134 |
2011年08月 | -0.655818403 |
2011年07月 | -1.27566217 |
2011年06月 | -1.30497736 |
2011年05月 | -1.183351185 |
2011年04月 | -1.204891977 |
2011年03月 | -1.167203865 |
2011年02月 | -1.247025923 |
2011年01月 | -1.399206837 |
2010年12月 | -1.207399115 |
2010年11月 | -0.97415399 |
2010年10月 | -0.746082712 |
2010年09月 | -0.605648537 |
2010年08月 | -0.57215013 |
2010年07月 | -0.766127801 |
2010年06月 | -0.722491831 |
2010年05月 | -0.787704889 |
2010年04月 | -0.898073005 |
2010年03月 | -0.982741239 |
2010年02月 | -1.083683948 |
2010年01月 | -0.974268722 |