裁定取引の概要
裁定取引の状況を示した指標の一覧です。裁定買残・裁定売残・裁定残(差引・ネットポジション)・プログラム売買・裁定買残比率の推移を掲載していますので、先高・先安・急落リスクなどを見ることができます。裁定取引の状況は日本株に与える影響が大きく、日本株は裁定買残の増加とともに株価が上昇して裁定解消売りで下がる、というのが基本です。裁定解消売りは、どんな状況で出やすいのでしょうか?そもそも「裁定取引」はどういったものなのか?の解説も記載しています。
- 当ページは、裁定取引(裁定買残・裁定売残・裁定残(差引・ネットポジション)・プログラム売買)・裁定買残比率の解説と推移(チャートと時系列)を掲載したページです。
- 各指数・指標の解説
「裁定取引(アービトラージ)とは」
「裁定買残の見方と解説」
「プログラム売買とは」 - Source:JPX(Japan Exchange Group, Inc.:日本取引所グループ)
- 毎営業日、前々営業日分のデータ公表・更新。
- 金額の合計(当月・翌限以降)のデータは、週間のプログラム売買の金額を掲載。毎週第3営業日に公表・更新。
- Program/Arbitrage Trading(japan) historical data&chart
裁定取引とは?わかりやすく簡単に解説
裁定取引(読み方:さいていとりひき)とは、デリバティブの原資産とデリバティブ取引の市場間などで生じる相場の歪みや乖離を利用して利益を上げる取引です。
と少し難しい言い方ですが、ここでは「日経平均株価」と「日経平均先物」を例にして簡単に解説します。
デリバティブとは、金利や債券、通貨、株価指数などの金融商品を原資産として、そこから派生した商品です。原資産(げんしさん)とは、デリバティブ(先物やオプション・スワップ)の取引の対象となっている資産です。その価格がデリバティブの価格を決定づける資産を意味します。つまり、日経平均株価と日経平均先物を例にすると、日経平均先物は日経平均株価という株価指数を原資産とした先物(デリバティブ)ということです。
デリバティブは、原資産から派生した商品ですので原資産と関連を持っています。デリバティブの原資産の価格が動けばデリバティブの価格も動きます(※ただし、デリバティブの原資産とデリバティブでは違った性質を持っています)。デリバティブという言葉は、先物やオプション、スワップなどの総称として用いられており、日経平均株価と日経平均先物であれば、日経平均株価がデリバティブの原資産、日経平均先物がデリバティブとなります。
日経平均株価と日経平均先物では、時間差や地域差、市場の違いなどで違った価格がつくことがあります。ただ、日経平均株価と日経平均先物では日経平均株価が原資産ですので、日経平均株価と日経平均先物の間で価格差が生じた場合、いずれ互いの価格は収束するので、価格差が生じた際に安い方を買って高い方を売っておけばその価格差で儲けることができます。この価格差を利用して利益を得ようとする取引が「裁定取引」です。
ただ、こういった価格差は各裁定取引によってすぐに修正されますので、裁定取引で得られる儲けは少ないです。ただ、デリバティブの原資産とデリバティブの取引は連動する者同士の取引ですので、裁定取引はリスクが小さい取引と言えます。違った言い方をすれば、裁定取引があるから日経平均株価と日経平均先物は連動しているとも言えます。
裁定残(裁定買残と裁定売残)の解説
裁定買残とは?
裁定買残(読み方:さいていかいざん)とは、裁定取引でまだ解消されていない現物の買いの残高です。裁定取引は、主に「先物売りと現物買い」のセットで取引することが多く、その価格差で利益を得ようとする投資家が多いです。裁定買残とは、その現物買いの残高です(日経平均株価と日経平均先物であれば、日経平均株価が現物、日経平均先物が先物となります)。
裁定売残とは?
裁定売残(読み方:さいていうりざん)とは、「先物買いと現物売り」の残高です。現物売りとは、現物を空売りすることです。裁定買残と裁定売残を合わせて「裁定残(読み方:さいていざん)」といいます。
裁定買残をわかりやすく解説
裁定買残を見よう!
裁定買残と裁定売残は、通常であれば裁定買残が圧倒的に多い傾向があります。裁定買残の動向は相場に与える影響も大きくなるため、裁定残は通常、裁定買残を見ます。ただし、相場急落時は裁定売残が急増するので、その場合は裁定売残も注目されます。
裁定解消売りにより株価急落に注意!
株価が強い上昇になると、現物買いが増えて裁定買残は増加します。株価が弱くなれば裁定取引を解消する売りが増えてきます。この裁定取引を解消するための売りを「裁定解消売り(読み方:さいていかいしょううり)」といいます。この裁定解消売りは、時に相場に大きな売り圧力となり、株価急落の要因になるため注目されます。
日本株は裁定買残の増加で株価が上がって、裁定解消売りで下がる傾向があります。それが基本形です。一方、先物買いの減少で裁定買残が減少していれば、将来の裁定解消売りの圧力が弱まりますので、株価にとってはプラス要因となり、株価の下値は限定的になりやすいです。
先物には理論価格があります。先物は金利やコストを含んだ価格になるのが普通ですので、通常は現物より先物の価格が高くなります。先物より現物が高くなる「逆ざや」が発生すれば、裁定解消売りに繋がります。
SQ(特別清算指数)の日(SQ日)は、先物の金利やコストがゼロになるので、先物と現物の価格が同価格になります。ゆえに、SQ前に現物と先物でさやが開いていれば、現物買い・先物売りが増えて裁定買残は増加します。逆に、現物と先物で逆ざやが発生していれば裁定解消売りが出やすくなります。
マイナス金利の影響
ただし、近年はマイナス金利の影響で先物より現物が高くなる逆ざやは普通となっています。先物は短期金利を水準としますので、マイナス金利では先物の方が現物より安くなりやすいです。
裁定買残の水準を見る
裁定買残が少ない場合、株価の先高を見ている投資家が少ないことを示しています。先高期待がなく、海外投資家が日本への投資をしなくなった時、裁定買残は金額で2571億円まで低下したことがあります。裁定買残は株数ベースで、1992年以降では30億株がピーク、平均的に5億株がボトム、リーマンショック後は3億株程度まで低下、近年はそれも割り込むことも多い形で推移していますので、日本への投資を手控えている状況と見れます。
一方、仮需比率が0.6%に達すると裁定解消売りが出やすい傾向があります。これは、裁定取引が証券会社の一部門だけの取引で、どれだけ取引していいかも決められていますので、仮需比率の0.6%が重しになりやすいと推察されています(仮需比率は当サイトで掲載しています。下の欄にリンクを貼っています)。
裁定買残を見る場合の注意点
裁定買残は内外証券会社の自己申告分だけのデータです。ゆえに、裁定買残が増えていようが減っていようが、売りが増えれば株価は下がりますので注意が必要です。
海外投資家の先物ポジションを見て裁定解消売りが出やすい状況かをチェック!
海外投資家の日経平均先物(日経225先物)とTOPIX先物のポジションは、以下のページで掲載しています(解説含む)。裁定解消売りが出やすい状況かをこちらでもチェックしておきましょう。
裁定売残をわかりやすく解説
裁定売残は「先物買いと現物売り」の残高です。
裁定売残の増加・減少と株価の関係を押さえよう!
例えば、裁定売残が減って日経平均株価が上昇した場合、裁定売残のポジション解消による現物の買戻しが入って日経平均株価の上昇に寄与したと考えられます。裁定売残の減少が続く局面では、日経平均株価の上昇継続要因となりますし、底堅く推移しやすいと考えられます。先高期待が高い場合は、裁定売残が減って日経平均株価が上昇するという展開になりやすいです。その場合、オプションの建玉(コールオプションの建玉)のストライクプライス(権利行使価格)のどの水準の建玉が積みあがっているかを見て、どの程度の先高を投資家が期待しているかを見ると、日経平均株価の上値メドの参考になりやすいです。
ただし、逆を言えば、裁定売残が減ってくると新規の裁定売りのポジションが組みやすくなりますので、裁定売残が増えてくれば日経平均株価の上昇を抑える要因となりやすいです。また、裁定売残が減った際に金融市場で悪材料が出れば、日経平均株価の売り圧力が強まる展開となりやすいので注意が必要です。
一方、逆に裁定売残が高水準に積み上がっていると将来的に現物が買い戻されますので、将来的な買い圧力となります。ゆえに、裁定売残の解消が進む局面では日経平均株価の上昇要因となります。
裁定買残も裁定売残も少ない場合、株価は乱高下しやすい
裁定買残も裁定売残も少ない場合があります。裁定買残も裁定売残も積まれていない状況です。これは新規の裁定買いと新規の裁定売りが入りやすい状況です。言い方を変えれば、どちらも積むしかない状況です。この場合、日中に新規の裁定買いと新規の裁定売りによって相場が乱高下しやすくなるので注意が必要です。
裁定残とは?
裁定残(読み方:さいていざん)とは、裁定買残と裁定売残のことですが、当ページでは裁定買残と裁定売残を差し引いた推移も掲載しており、それを「裁定残(差引・ネットポジション)」としてチャートを掲載しています。
裁定残の計算式
裁定残(差引・ネットポジション)=裁定買残-裁定売残
裁定残の見方(裁定残のピークとボトム)
裁定残のチャートは、その数値が高いほど裁定売残より裁定買残が多いことを示します(その数値が低いほど裁定買残より裁定売残が多いことを示します)。裁定残は日経平均株価と連動しやすい傾向があるので注目されます。裁定残の上昇とともに日経平均株価が上昇していれば、日経平均株価の上昇は裁定買残の増加の影響が強いことを示します。
上記で解説しましたが、裁定買残の増加で株価が上がり、裁定解消売りで株価が下がるのが日経平均株価の基本形です。
裁定残の見方は、裁定残のピーク水準(天井水準)をチャートを見て把握しておき、裁定残がピーク水準に達すれば”そろそろ裁定解消売りが出やすい(株価が下がりやすくなる)”と警戒しておくのがいいと思います。”裁定残のピーク水準で新規買いは入れない”を徹底しておくとトレードの失敗は少なくなるのではないかと思います。ボトム水準(底水準)も見方は同じです。ただし、ピーク・ボトムともに水準は時々によって変わる点は注意が必要です。
具体的な使い方としては、裁定残のピーク・ボトム水準と日経平均株価のテクニカル分析を併用し、裁定残のピーク・ボトム水準で日経平均株価のチャートで短期トレンドの転換が出れば仕掛ける(例えば、裁定残のボトム水準で日経平均株価のチャートで短期トレンドの転換が出れば買いで仕掛ける)というのが一つ成功率が高い方法かと思います。利益確定のタイミングはその逆になります。また、以下で紹介する信用残も見て相場判断するのも一般的です。万全の指標はありませんので、一つの指標だけでなく他指標と併用すると成功率が高まりやすくなると思います。
信用残(信用買残と信用売残)も見よう!
裁定残(裁定買残と裁定売残)は需給面を見る指標ですが、仮需と呼ばれる需給面を見る指標に信用残(信用買残と信用売残)があります。一般的に、需給面を見る際に裁定残と信用残は一緒に見ることが多く、両者を見て先行きの相場判断することが多いです。信用残の推移と見方の解説は、以下のページで掲載していますので参考にしてください。以下のページでは、全体の需要と信用買い残の割合である「信用買残比率」の推移も掲載しています。当ページで掲載している裁定買残比率と一緒に見ていただくと、仮需の現状を把握しやすくなります。
投資部門別売買状況(現物と先物)の推移はこちら
需給指標として裁定残と一緒に見ておきたい「投資部門別売買状況(現物と先物)」の推移と解説は、以下のページで掲載しています。
裁定買残比率とは?
裁定買残比率(読み方:さいていかいざんひりつ)とは、全体の需要(総需要:仮需と実需の合計)に占める裁定買残の割合です。
裁定買残比率で何がわかる?
裁定買残比率は全体の需要のうちの裁定買残(仮需)の割合がどれくらいかがわかる指標ですので、投機目的の一時的な需要が全体需要のうちどれだけあるかがわかります。裁定買残比率を見れば、裁定解消売りが出た場合に全体需要から見て影響が出やすいかどうかがわかりやすくなります。主に裁定買残や時価総額、仮需比率と一緒に見て、裁定解消売りが出やすい状況か、出た場合に影響は大きそうか限定的になりそうかを見る指標です。
裁定買残比率の計算
当ページの裁定買残比率は、裁定買残と時価総額を用いて算出しています。
裁定買残比率が高い場合、裁定解消売りに注意する
裁定買残比率が高い場合や、以下で紹介する仮需比率が高い場合は裁定解消売りが出やすい状況を表しています。マーケットの一時的要因を材料にボラタイルに下がる相場つきになる可能性が高まりますので注意が必要です。裁定買残比率が高いのか?低いのか?は、過去の水準から判断するのが一般的です。
裁定買残比率の見方・裁定解消売りの影響は大きいか?限定的か?
当ページでは裁定買残と裁定買残比率の推移を掲載していますので共に見ていただくのが良いですが、裁定買残が増加していて裁定買残比率も増加している場合、裁定解消売りが出れば相場への影響が大きくなりやすいので注意が必要です。一方、裁定買残が増加しているのに裁定買残比率が低い場合、影響は限定的になりやすいと考えられます(全体需要と市況の変化による)。
また、裁定買残比率のチャートには時価総額の棒グラフも表記しています。これは時価総額と一緒に見てもらうのが良いためです。
裁定買残比率は過去の水準から高低を判断するのが一般的ですが、同時に時価総額も一緒に見た方が良いです。時価総額は全体の需要ですので、時価総額が伸びていないのに裁定買残比率が高まっている場合、裁定解消売りが出れば相場への影響は大きくなりやすいです。一方、時価総額が伸びている場合は株価も上昇していると思いますが、株価の上昇とともに逆張りの国内投資家の利益確定は進んでいる場合、買い付け余力が十分ありますので、裁定買残比率の水準や市況の変化にもよりますが、裁定解消売りが出ても相場への影響は限定的になりやすいと考えられます(仮需比率が高い場合は相場への影響は大きくなりやすい)。
仮需比率の推移はこちら
仮需(裁定残と信用残)の全体の需要に占める割合を表した指標を「仮需比率」といいます。仮需比率が高い場合、裁定解消売りの影響が大きくなりやすいので、裁定買残比率と仮需比率は共に見た方がいいです。裁定解消売りが出やすい水準か出にくい水準かも判断しやすいのでチェックしておきましょう。仮需比率の推移と解説は、以下のページで掲載しています。
裁定買残のチャート
裁定買残の株数のチャート
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- 裁定買残(株数)は、買ポジションの当限+翌限以降の株数
- Chart [Buy Positions-Number of Shares(Cash Position Related to Index Arbitrage)]
裁定買残の金額のチャート
- 裁定買残(金額)は、週間の買ポジションの金額の合計(当月・翌限以降)
- Chart [Buy Positions-Value(Cash Position Related to Index Arbitrage)]
裁定売残のチャート
裁定売残の株数のチャート
- 裁定売残(株数)は、売ポジションの当限+翌限以降の株数
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裁定売残の金額のチャート
- 裁定売残(金額)は、週間の売ポジションの金額の合計(当月・翌限以降)
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裁定残(差引・ネットポジション)のチャート
裁定残の株数のチャート
- 裁定残は、裁定買残と裁定売残の差引(ネットポジション)です。
- 「裁定残=裁定買残ー裁定売残」
裁定残の金額のチャート
裁定買残比率のチャート
[速報] 最新データ|裁定取引残高の時系列(historical data)
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対象日 | 裁定売残 | 裁定買残 | 裁定残 | 裁定買残 比率 | |||
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枚数 | 金額 | 枚数 | 金額 | 枚数 | 金額 |