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FRBの物価目標とPCE・CPI・期待インフレ率の見方を解説

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FRBの物価目標

FRBの物価目標とは?

FRBの物価目標とは、FRB(連邦準備制度理事会)が示す米国の物価上昇率(インフレ率)の目標です。現在のFRBの物価目標は「2%」です(2024年4月時点)。FRBの使命の一つは「物価の安定」ですが、それを達成するための具体的な物価目標です。物価目標を示すことで、金融政策で流通する通貨量を調節しながら物価上昇率を物価目標に近づけ、安定的な経済成長を目指す狙いがあります。

FRBの物価目標は、どのインフレ指標を見ればいい?

FRBが物価目標の対象としているのは「PCEコア」です。米国のPCEコアの前年比で2%がFRBの物価目標です。PCEコアの推移と解説は、以下のページに掲載しています。

消費者物価指数(CPI)はなぜ注目される?CPIを見る場合の注意点

一方、インフレ指標として「消費者物価指数(CPI)」も注目されています。これは、世界各国の中央銀行が物価目標としてCPIを採用している点と、米国ではPCEよりCPIの方が早く公表される点が挙げられます。PCEコアに対応するCPIは「コアCPI」ですので、コアCPIが注目されます。米国のコアCPIの推移と解説は、以下のページに掲載しています。

ただし、CPIベースでFRBの物価目標を見る場合は注意が必要で、CPIはPCEより0.2-0.3%程度高く出るのが周知の事実ですので、FRBの物価目標2%をCPIベースで見るなら、FRBの物価目標は「2.2-2.3%」となります(おおむね「2.3%」で見ることが多いです)。

つまり、

FRBの物価目標2%(PCEベース)=FRBの物価目標2.3%(CPIベース)

PCEコアを見る場合、PCEコアが2%に近づけば「FRBの物価目標に近づいた」ということですが、コアCPIの場合、コアCPIが2.3%に近づけば「FRBの物価目標に近づいた」ということです。

期待インフレ率とFRBの物価目標

市場参加者の先行きの予想インフレ率は「期待インフレ率」で見ます。期待インフレ率の推移と解説は以下のページに掲載しています。

さて、この期待インフレ率ですが、期待インフレ率は市場参加者が予測する将来の物価上昇率です。市場参加者が先行きの物価上昇率をどれくらいで見ているのかを表した指標で、その解説は上記の期待インフレ率のページに記載していますのでここでは割愛しますが、期待インフレ率(BEI:ブレークイーブンインフレ率)は、物価連動国債利付国債の金利差から予測した物価上昇率で、物価連動国債は利払いがCPIで決まります。よって、期待インフレ率は「CPIベース」の指標です。

つまり、市場参加者が将来の物価上昇率をどれくらいで見ているのか?FRBの物価目標に近づいているのかな?と思って期待インフレ率を見る場合、FRBの物価目標2%はPCEベースですので、CPIベースに置き換える必要があります。

先述の通り、FRBの物価目標はCPIベースでは「2.3%」ですので、期待インフレ率が2.3%に近づいていれば「FRBの物価目標2%に近づいた」ということです。

柔軟な平均インフレ目標(FAIT)とは?

FRBは2012年まで物価目標、いわゆるインフレターゲットは採用していませんでしたが、2012年1月25日に当時のバーナンキFRB議長が初めて「長期の物価目標(長期物価ゴール)」として2%目標を導入しました。そして、2020年8月にパウエルFRB議長が、物価上昇率が何年も目標の2%を下回り続けたため新しく柔軟な政策運営の方法に切り替えると宣言し、「柔軟な平均インフレ目標(FAIT)」を導入しました。

「柔軟な平均インフレ目標」とは、英語で「FAIT(Flexible Average Inflation Target)」といいますが、物価上昇率が一定期間の平均で2%になることを目標とする政策です。物価上昇率が2%を超えてもFF金利政策金利)をゼロ近辺(低金利)に据え置ける枠組みで、現在もこれを採用しています。ただし、「柔軟な平均インフレ目標」の”一定期間”がどの程度か、どの程度の期間の2%達成を目標としているのか、2%超えはどの程度の水準なのか、それらは一切明確に示されていません。

それまでの「長期の物価目標(長期物価ゴール)」は物価上昇率2%を目標としていましたが、「柔軟な平均インフレ目標」は、物価目標2%に縛られることなく、過去から現在までの一定期間の平均で物価上昇率が2%になることを目標にしています。2%を下回る物価上昇率が続いた後はFF金利をゼロ近辺に据え置いて当面2%超えを容認するもので、金融政策の判断が厳密に2%に縛られない目標へと移行しました。ですが、2021年からの急激な物価上昇において早々に大幅な利上げをしたため、このコミットメントは早々に破られたとの見方が多くなりました。「柔軟な平均インフレ目標」は2%を下回る物価上昇率が続いた後は2%超えの上振れを容認していますが、この逆の場合、つまり2%を上回る物価上昇率が続いた後の2%の下振れを容認する姿勢は示しておらず、現時点でFRBは物価上昇率が2%に下がる前の利上げ停止と利下げ開始を示唆していますので、平均のインフレ率は2%より高くなると推察できるのが現状です(どの程度の期間で見るかによる)。

なぜ物価目標は2%なのか?

「物価の安定」は経済活動や国民生活の基盤になるため、各国の中央銀行やFRBは「物価の安定」を使命としています。物価は、財やサービスの全体の価格で、個別の価格の基準となるものです。この基準が安定していれば、個別の価格との差で個別の価格の変化がわかります。消費者が興味を持っているものは価格が上昇しやすく、興味のないものは価格が下落しやすいので、この変化を見れば消費者は何に興味化があり、何に興味がないのか、それを受けて企業はどの道を行けばいいのか、企業にとっては先の方向性がわかりますし、経済全体としては資源の最適な配分がなされやすくなりニーズに応じた技術革新が行われやすくなるので、物価の安定は健全で安定的な経済成長がなされると考えられています。逆に、物価が大きく変動し安定していなければそれら全てが非効率となり、企業は見通しが立てれず投資は抑制されて景気は不安定になる等、経済成長は低下しやすくなります。よって、物価の安定は重要視されています。

さて、多くの国の中央銀行は、物価目標をおおむね「2%」に設定しています。2%の±1%程度で設定していることがほとんどで、2%を持続的に安定させることを目標にして金融政策を判断しています。

では、なぜ「2%」なのでしょうか?

消費者がモノを買えば企業業績が上がり、給料が増えて欲しいものが買える、といった循環の効いた好景気は誰にとってもいいと定義されています。企業は少し価格を上げて売れるのであれば利益を上げるために価格を上げようと思いますし、企業の利益が上がれば給料が上がって消費者は欲しいものが買えるので、経済学では緩やかな物価上昇は「良い状態」とされています。

ゆえに、物価上昇率は0%より高い方が良い状態と言えます。0%より高ければデフレは回避できますし、金利(名目)は物価上昇率より高いのが通常の状態で、いざという時に利下げ余地はあった方がいいですし、物価上昇率はインフレ指標(物価指数)で見ますが、この物価指数は計測の特性上、上方バイアスがかかって実際の物価上昇率より高い数値が出るとされていますので(この上方バイアスは1%前後と推定されています)、0%より高くなければなりません。

よって、物価上昇率は1%より高くしなければならないと言えますが、なぜ2%なのか?これには科学的根拠はなく、経済学者や当局実務者の一部で3-4%に引き上げるべきとの声もあり、最適な物価上昇率はわかっていません。

ただ、物価上昇率は金利に影響します。為替レートは2国間の金利差が大きく影響します。為替は通貨と通貨の交換ですが、金利の交換でもありますので、他国が物価目標を2%に設定したのなら自国も2%に設定しなければ為替レートが一方通行に上昇・低下してしまいます。よって、物価目標は各国で揃えておく必要があると言えます。

物価目標2%の発祥とそれに追随した各国中央銀行の物価目標の歴史

この物価目標2%ですが、発祥はニュージーランドです。1980年代後半に高インフレに悩んでいたニュージーランドは、1988年に物価上昇率が15%から10%まで低下していました。ただ、当時のロジャー・ダグラス財務大臣がテレビのインタビューで「現在の10%はまだ高い。理想的には0%から1%が望ましい」と発言しました。当時、物価目標が設定されていなかったため、この発言は的外れとされましたが、財務大臣がこの発言したため、ニュージーランド準備銀行は具体的な目標数値の設定に迫られました。先述の通りインフレの計測は上方バイアスがかかり、ニュージーランド準備銀行はこのバイアスを1%程度と推定しました。「理想的には0%から1%が望ましい」という財務大臣の発言と、上方バイアスが1%程度かかることから、ニュージーランド準備銀行は2%を目標値として設定しました。これが物価目標2%の発祥とされています。

先述の通り、為替の観点から他国が2%で設定したのであれば自国も2%で設定しなければ具合が悪いので、これを受けてすぐにカナダ・イギリス・スウェーデン・オーストラリアの中央銀行が物価目標2%を採用し、ブラジル・チリ・イスラエル・韓国・メキシコ・南アフリカ・フィリピン・タイ・チェコ・ハンガリー・ポーランドも追随しました。米国も2012年に採用、2012年に先進国で2%を採用していなかったのは日本だけでしたが、2013年1月に日本銀行は「物価安定目標」として、物価上昇率の目標を1%から2%に引き上げました。